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ヘナ2 (ヘナカラー2)

「ふたりの距離、ひとさじ分」


  (ヘナ物語2 作 ジャムヘアーサロン)


「ただいま」


つぶやくような、小さくて元気のない声。


──それは、自分でも気づいてる。


玄関の靴は、いつもきれいに揃ってる。


食卓には、いつもの手料理と味噌汁の湯気。


テレビではニュースが小さく流れてる。


うちの嫁は、ようしゃべる。


晩ごはん作りながら、テレビ観ながら、


俺が返事せんでも、勝手に喋ってる。


だからつい、聴き流す癖がついた。


その夜。寝る前に、嫁がぽつりとこぼした。


「今日な、いつもの美容室で──


 はじめてヘナってやつしてもろたんよ。


 ……でもなんか、全然気づいてくれへんのやなぁって。」


嫁が美容室に行ってきたことくらい、見りゃわかる。


けど、別に言わない。いつものことやし。


ただ、その時。


背中を向けて、冗談めかして言った声が、


なんかちょっと、寂しそうで。


なんでやろ──胸が、きゅっとなった。


次の朝。


コーヒーを淹れたのは、俺の方やった。


嫁の整えられた髪が、耳にかけられていて


朝日を浴びて、ふわっと艶やかやった。


……そやな。


ちゃんと見たってなかったな。


「髪、や。なんか、ずいぶん若く見える……っていうか。


 ……あれやな、ジャムっていう美容室、上手いんやな。」


振り返った嫁は、びっくりした顔したあと、


そっと──にっこり、笑った。


ほんの一言が


朝のコーヒーを、ちょっと特別な味に変えた


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